こんな人におすすめ!
#ユーモラスな読書体験を得たい人
#肛門に違和感があったり、便意に翻弄されがちな人
#直木賞作家の日常を知りたい人
『風と共にゆとりぬ』は朝井リョウのエッセイ「ゆとりシリーズ」第2弾!
第1弾『時をかけるゆとり』に続く、エッセイ『風と共にゆとりぬ』。エッセイなのでどこから読んでも楽しめるのですが、『時をかけるゆとり』から登場したある人物が再び現れたりと、ちょっぴり本当に続編的な要素も。
また『時をかけるゆとり』は大学時代の出来事がメイン、本書はざっくり社会人編・専業作家編・肛門編の3部構成です。「社会人」「専業作家」というくくりはとても自然なのですが、この並びに肛門という異質な2文字が入ってくる大胆な作品。
肛門の話は「肛門記」と題され、なんと前・中・後・Eternalの4部構成となっています。

ただ第1弾のような面白話も健在で、時々グッとくるエピソードも挟みこまれますので、本記事のタイトルはリリー・フランキーさんによる自伝的長編小説『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』をオマージュさせていただきました。
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『風と共にゆとりぬ』 に登場する人物を一部抜粋
まだ『風と共にゆとりぬ』を読んでいない方が、どんなエッセイなのか雰囲気を掴めるよう、人物紹介を一部ですが書いてみました。
もうすでに読んだ方も、こんな方たちいたな~と思い出を振り返ってもらえれば幸いです。
※基本敬称略です
- 朝井リョウ…3年の兼業生活を経て、専業作家になる。前作『時をかけるゆとり』でその存在が明かされていたお尻の爆弾がついに動き出す
- 眼科医…「眼科医とのその後」に登場。前作『時をかけるゆとり』にも出てきた因縁の(?)眼科医。目に痛みを抱え、4年ぶりに相対することに
- 朝井リョウの父…「朝井家 in ハワイ」などに登場。還暦を迎えたがまだ現役で働いている。ただ息子(=朝井リョウ)と娘から老人だと思われており、親孝行としてハワイ旅行が計画されることに。感受性が低い
- 朝井リョウの母…「朝井家 in ハワイ」などに登場。前作『時をかけるゆとり』では免許証を財布に収納しやすい形に切断したエピソードが明かされる。ハワイ旅行ではセレブ御用達の歯磨き粉を購入しようとするが、商品名を忘れるという痛恨のミスをしてしまった。感受性が低い
- 朝井リョウの姉…「朝井家 in ハワイ」などに登場。父の還暦を機に、両親を喜ばせようとハワイ旅行を計画。感受性が低い
- 今野さん(仮名)…「作家による本気の余興」に登場。朝井リョウの担当税理士。背も高くガッチリ体型で、パワーがみなぎっているタイプ。結婚することになり、朝井リョウから「余興をやらせてほしい」と打診される
- 柚木麻子…「作家による本気の余興」に登場。朝井リョウの作家仲間。今野さんの余興に熱を上げる
- 藤井隆…朝井リョウの憧れの人
- Uさん…「対決! レンタル彼氏」に登場。朝井リョウの仕事関係者。29歳女性。朝井リョウの「誰かになりきりたい」という欲求に前のめりで協力し、朝井リョウの姉という設定でレンタル彼氏を利用する
- M氏…「対決! レンタル彼氏」に登場。Uさんにレンタルされた彼氏。Uさんと交際している設定で、Uさんの弟になりきった朝井リョウと会うことになる
- Kさん…「ファッションセンス外注元年」などに登場。スタイリストをしている朝井リョウの友人の友人。朝井リョウが「この服が好きだから」ではなく「これなら人に嫌われなさそうだから」という理由で服を選んでいることを見抜く凄腕。そのセンスから朝井リョウは、全幅の信頼を寄せていく
『風と共にゆとりぬ』の好きなエピソード
個人的に好きだったエッセイを振り返ります。基本的には上記の登場人物が出てくるエピソードがお気に入りです。
「朝井家 in ハワイ」

朝井リョウさんの父が還暦を迎え、姉と「両親はもう老人なのかもしれない」という認識を共有したことで、ハワイ旅行をプレゼントすることになったお話。
ハワイでの日々も綴られるのですが、私が「おもしろ!」と思ったのはお姉さまのサプライズです。
ハワイ旅行を計画するうち、サプライズハイ(?)に陥ったお姉さまが予想外のサプライズ案を考えつき、朝井リョウさんも巻き込まれていきます。
どんなサプライズなのかはぜひ読んでみてください……!
「対決! レンタル彼氏」
藤井隆さんに憧れ、普段から「誰かになりきりたい」という欲求を持つ朝井リョウさん。そんな欲を仕事関係者のUさんに話したところ、「私協力したいです」と思いがけず食いついてくれます。
Uさんの提案で、
- Uさんと朝井リョウさんは姉と弟
- Uさんが彼氏をレンタルする
- 地元にいる両親がUさん(29歳)が独身でいることにしびれを切らしているので、東京にいる弟(=朝井リョウさん)に彼氏を見せ安心させる
という設定がポンポンと決まっていきました。
そしてついにレンタル彼氏と対面する日。朝井リョウさんはその実力に驚きながらも、自らのなりきり力もどんどん高めていきます。
その際の朝井さんの心の声がこちら。
全員がウソをついているって、なんて楽なんだろう。誰も本当の自分を差し出していないので、心が擦り減るようなタイミングが一切ないのだ。人間関係が時にとても疲れるのは、みんな、きちんと本物同士で関わり合っているからなのだろう
朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』Kindle版、文藝春秋、位置No.658
この見解には私も大いに頷くのですが、なんせ全員(厳密にはレンタル彼氏はお仕事なので、彼以外)、別にやらなくてもいいことをわざわざやっている中での気づきという点で、おかしみがあります。
無駄に設定を考え、時間を割き、金銭まで発生しているこの出来事。これを仮に考えついても実行に移してしまうすごさ。
無駄を楽しむって最高ですよね。
ただひょうきんな弟を演じるために赤いフレームのメガネをかけ役作りしたことに対し、朝井リョウさんは「鈴木亮平も真っ青の画期的な役作りである」と語っているのですが、現在放送中の日曜劇場『リブート』の鈴木亮平を観ると、さすがに真っ青になるはず。鈴木亮平本当にすごい。マジで1人2役に見える……。
「オトナへの第一歩」
こちらは、朝井リョウさんの初バイト「結婚式場のウェイター」のお話。このエピソードが好きな理由は2つです。
1つ目は私も初バイトが結婚式場のウェイターで、朝井リョウさんも書かれているようにとても大変で、共感しまくりだったため。
2つ目は朝井リョウさんが犯すミスがとんでもなかったためです。ミスの中身はエッセイを読んで知っていただきたいので、こちらのエピソードの紹介はこれくらいにしておきます!
式場のスタッフって、参列者がドレスやスーツなので絶対にこぼさず配膳しなくてはいけないプレッシャーや、シャンパンの炭酸の泡の立ち具合の計算、テーブルは皿でパンパンなのに時間通りに料理出しをする時間との闘いなどなど、びっくりするほど大変でした……。
それを飲食未経験で応募してしまう無謀さ(今振り返ったら考えられない)。疲れ切った状態で家に帰り「お金を稼ぐって大変なんだね」と母につぶやいた個人的な思い出があります。
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『風と共にゆとりぬ』のグッときたエピソード
『風と共にゆとりぬ』を読んでグッときたエピソードや言葉をご紹介。少し自分の考えや体験を交えながら書いていますが、よろしければお付き合いくださいませ。
「能動的成長期」
友人が海外へ行くことになり、送別会を企画した朝井リョウさんたち。「日本でやり残したことをさせてあげよう」というコンセプトのもと、カラオケ好きな友人のために、生バンドを従えて歌うという、ライブ体験をプレゼントすることが決まります。
その際朝井リョウさんも一緒に歌ったそうなのですが、初めての体験をして、朝井リョウさんが感じた言葉が心に残っています。
大人になると、初めて体験することが減っていく。これまでの経験値から、生きていくうえで必要なこと、不要なことが見極められるようになり、必要なことしか手に取らなくなっていく……こちらが何をするでもなく訪れてくれた受動的な成長期が終わった今、必要か不要かだなんてとりあえず置いておいて、能動的に何かしらの初体験に手を伸ばすことでしか自分の輪郭は変わっていかない
朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』Kindle版、文藝春秋、位置No.2933
良い言葉ですよね。
個人的に私は実家を出てちょうど7年が経ち、自分にとって必要なことや得意なこと、生活を効率化する術を身に着け、「最近生きやすいな!!」と感じていたのですが、考え方を少し変えてみると、「今の状態ってこれまでの選択を繰り返しているだけで、成長はしていないのかも」と、この文章を読んで自分を振り返りました。
たまたま昨日、初めて生でハルモニームジーク(=管楽八重奏)を聴いてきたのですが、自分でも思ってもみなかった方向に心が動かされて、なかなかテンションが上がりました。
「子どもにとっての言葉」
全国の小中高生を対象とした「私のおすすめブックコンテスト」で、審査委員長を務めた朝井リョウさん。ちなみに「私のおすすめブックコンテスト」とは、自分の好きな本の魅力を伝える「おすすめ文」のコンテストだそうです。
このエッセイにある言葉に私はグッときました。
特に、財も力もない「子ども」という時代を生き抜く上で、本から授かる言葉そのものや、本の中の多くの言葉に触れるという経験は、自分を守る盾になりうると私は思っている
朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』Kindle版、文藝春秋、位置No.3203
これは本当にそうだと思っていて、その言葉が大人になっても自分を支えてくれることがあるな~と思います。
私も子ども時代に読んだ本で、タイトルなどは忘れてしまったのですが、「男の子とお母さんのふたり暮らしで、テレビの豪邸紹介VTRが流れている中、そのお母さんはとても幸せそうにカップラーメンか何かを食べている姿を見て、男の子がテレビの中にいる豪邸の家主より今のお母さんの方がよっぽど幸せそうだと思った」みたいな描写がすごく心に残っています。
当時子どもながら、幸せかどうかってお金持ちかどうかっていう軸ではないんだな、自分で決めていいんだな、と思った記憶があります。あまり裕福な方の家庭ではなく、何かを我慢する場面もあったのですが、だからといって不幸に思わなくてもいいんだと、たまにこのシーンを思い返していました。
自分的に少し後悔というか、子どものときはたくさん本を読むタイプではなかったので、もっといろんな言葉や物語に出会っていたかったなと思います。
10代の中でも、小学生のときと高校生のときとで、同じ物語から感じることは変わりますし、子どものときにちょっと難しい本を読んで、打ちひしがれるのもいい経験ですよね。(29歳になっても難しい本は難しいままですが……)
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痔の王様に罹患してしまった直木賞作家のエッセイが読める『風と共にゆとりぬ』の肛門記

記事冒頭の方でもお伝えしましたが、本エッセイは3部構成。ラストはこれまでのテイストとは打って変わって、体の中でも狭めな面積を占めている部位「肛門」のお話です。
びっくりですが頭からお尻まで、本当に肛門の話となっています。前作『時をかけるゆとり』で痔&粉瘤(=血と膿がある部分に溜まってしまう病気)になってしまったことが明かされたわけですが、そのコンビがなんと大暴走。痔瘻(じろう)へとパワーアップしてしまいます。
この痔瘻は、痔の王様とも呼ばれ、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐ瘻管(ろうかん)というトンネルができてしまう痔なのです。つまり肛門付近にもうひとつ穴ができてしまう病で、痔の中でも最強クラスのため“痔の王様”とも言われています。(私はなぜか高校時代、友達に痔には痔瘻という痔の王様があることを教えてもらい、知っていました。女子高生がなぜそのトピックについて話していたのかは謎)
この暴君「痔瘻」に振り回される朝井リョウさんが描かれます。眼科医に続く癖のある医師の出現、「全大便を排出しろ」「大便の排出を我慢しろ」という指示、男性の手術時の大敵、尿〇カテ〇テルの登場など、数々の困難が降り注ぎます。
とにかく肛門に違和感のある方は病院へ、違和感のない方は健やかな肛門を維持し続けましょう!
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