こんな人におすすめ!
#刺激的な話が好きな人
#思い込みが激しい自分を制御したいなと思っている人
#コロナ禍社会が描かれた小説を読みたい人
『嫌いなら呼ぶなよ』とは
『嫌いなら呼ぶなよ』は2022年7月に発行された綿矢りさの小説です。4編の短編集からなり、「眼帯のミニーマウス」「神田タ」表題作の「嫌いなら呼ぶなよ」「老は害で若も輩」が収録されています(文庫で224ページ)。


テーマは「明るすぎる闇」。どの作品も主人公がクセありで、思い込みが暴走してしまいがちです。
そして『嫌いなら呼ぶなよ』はコロナがテーマでもあります。コロナによって浮き彫りにされた人間性や価値観も描かれています。
『嫌いなら呼ぶなよ』 ~4作品それぞれの感想~
帯にも書かれているように、『嫌いなら呼ぶなよ』を読んでいると“痛快な毒”にじわじわと支配され、ページをめくってめくっています。
どんなお話なのか、ネタバレはしない程度に紹介+感想を書いていきます!
眼帯のミニーマウス(テーマ:整形)
【あらすじ】
プチ整形を重ねる女性・りなっちが主人公。気を抜いて職場で整形(おでこへのヒアルロン酸注入)のことを話したら、その日中に広まり、いろんな人からいじられ……。

【感想】
シンプルに整形のことをいじってくる人にはモヤモヤしました。ほっといてほしい。歯の矯正には「良いよね~」となるのに、どうしておでこを立体的にすることに関しては、持論をぶつけてくるのだろうか。
あと少しズレますが、なんで人々は自分の顔をかわいいと思う人に対して叩きがちなのか(特にSNSで)。
容姿に自信を持ったって良くないか?と個人的に思います。どんな職業を選ぶか、どこに住むかと同じくらい、「どんな容姿でいることを選ぶか」に対しても口出ししないでほしい……! そうすればもう少し生きやすい世の中になるのではないでしょうか。
神田タ(テーマ:SNS・炎上)
【あらすじ】
29歳・アルバイターの女性、あだ名はぽやんちゃん。ある日のバイト中、同僚の女性から「あそこにYouTuber・神田が歩いている!」と話しかけられたことを機に、ぽやんちゃんは神田を知るようになる。動画を観ていくうちにぽやんちゃんは神田にハマり始め、神田のためを思ってアンチコメを送るようになる……。
【感想】
4編の中でも一番主人公がぶっ飛んでいる気がしました!!
何かにハマるところまではわかるのですが、相手のためを思ってアンチコメを送るようになるのがなかなか理解しがたい。コメントだけでなく、改善点や今後の企画を書き連ねた便せんも送るので、その行動力と猪突猛進さがクレイジーです。
心に残ったのは“交友関係のメンテ”というワード。以下引用します。
一人暮らしの部屋に帰ってきたあと、気分が鬱々と落ち込むほどさびしい夜もある。誰か友達を話し相手として消費したいけど、交友関係のメンテを怠っているせいで、気軽におしゃべりできる相手もいない。そんなとき私は素人のYouTuberの動画をテレビで垂れ流しにする
綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』河出文庫、p82
友達との関係って、誘われ待ちというか受け身でいると楽だし傷つかないけど、“誘う”という手間と勇気をときには引き受けないと、社会人の交友は持続しないなとつくづく思います。
メンテというと作業っぽいけど、今年30代に突入する私にとっても“交友関係のメンテ”は大きなテーマです。本来のテーマとは少しズレるかもしれませんが、基本は誘える人でありたいなと背中を押してくれるようなお話でもありました。
嫌いなら呼ぶなよ(テーマ:不倫)
【あらすじ】
妻を愛しながらも不倫を重ねる「僕」。妻の楓とともに向かうのは、楓の親友・森内萌華ことハムハム(旧姓の羽村から取ったあだ名)の新居だ。ホームパーティーのメンバーは森内夫妻と3人の子ども、もう一組の夫婦・河原夫妻と2人の子ども、そして楓と僕。コロナが蔓延したため、久々の再会に話も弾む中、ハムハムから「不倫してるんだってね」と告げられる。1vs5の裁判にかけられ、ハムハム率いる5人から言葉の槍を投げられ……。
【感想】
不倫男の言い分・思想を追体験できる物語でした!! ただ理解はできない! 性欲を満たすための浮気ではないのが厄介だな~と思いました。

不倫に対する「僕」なりの思想があり、5人の大人になじられながらも、「僕」は自分の人生や不倫について、心の中で自信満々に語ってくれます。小説じゃなければこんな生々しい本音は聞けません!
「僕」は不倫はするけど、女性を見下しているわけでもなければ、ただ性欲の対象として見ているわけでもない、新人種です。ただラストは、少し胸がギュッとなりました……!

老は害で若も輩(テーマ:老害)
【あらすじ】
綿矢りささんが、綿矢りささんを老害作家として描く、とんでもない鋭角の短編。42歳の女性ライター・シャトル蘭が綿矢りさに対してインタビューし、記事を雑誌に載せるという企画。物語に出てくるのは2人に加え、26歳の男性編集者・内田です。綿矢りさvsシャトル蘭のメールでの争いが勃発し、内田視点で物語が進んでいきます。
【感想】
会社員として、webメディアの編集をしている29歳の筆者からすると、メールでの殴り合いは胃が痛い!! 多分メールが来た瞬間読みはするけど、ちょっと置いておいて、事態が好転するわずかな可能性に賭けたりするだろうな……。
あとライターさんってクセ強めな人いるんですよね。人との衝突を衝突と思っていないような感じの。読んでいたら実生活でもうっすら身に覚えがあって、26歳の内田に感情移入しました。
社会人(働く会社員・フリーランス・アルバイトetc.)なら「うわ~~」と思いながら読める、刺激的な短編です。人と人とが働くと、揉めるときっていうのはありますからね。
ただ綿矢りささんが自分自身を老害として描いているのが面白いです。あらあら……と思うような描写があるので、綿矢りさの老害っぷりを体感してみてください。
最近筆者が、下記「よむ活堂」というオンライン書店をオープンしたので、こちらから買ってくださるととても嬉しいです!!!



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